当園の職員である原木が昆虫採集をしていたフィールドは主に静岡県中部の大井川水系で、南アルプスを源とする上流部から島田市内の河口周辺までくまなく調査し、子供時代から憧れていたものや県下初記録種など多くの種類を得ることができました。しかし1990年あたりから伐採などにより環境がかわってしまい、現在では昆虫の生息数や植物環境だけでなく、風景さえも当時の面影はありません。今回展示するものはそのような意味からも大変貴重な標本であると同時に、どれも採集時のさまざまな思い出を秘めた品でもあります。なにげなく過ごしていると気が付きませんが、静岡県は標高3000m級の高山や長い海岸線まで備えた環境豊かな県です。昆虫はその地域の環境を指標する生物で種類数が多ければ多いほど豊かな環境といえます。
「モドキとダマシ」 平成19年3月16日〜5月10日
数多い甲虫の中には、まったくちがう種類なのによく似たかたちをしたものがいます。このようなものには和名にモドキやダマシ、ニセなどがつけられることがあります。
名前はわたしたち人間がかってにつけたもので、生物の生態とは関係ないものもありますが別の種類に似るということは進化のなかで生き残るために重要なことでもあります。たとえば、昆虫の天敵である小鳥などがきらう体に毒を持つテントウムシやハチ、ホタル、ジョウカイボンなどに似ることで身を守ることができるからです。
昆虫の分類は体の表面を見て分けますが、姿かたちが似ていても種を決定付ける特徴が異なれば別な種類になり、そんなときに○○モドキとか○○ダマシという名前がつけられます。オサムシに似ているオサムシモドキのように個々につけられたものはいいのですが、ゴミムシダマシ科のように大きなグループにつけられた場合は対象物とは関係なくなってしまうことがあります。ゴミムシダマシ科の甲虫はゴミムシだけでなくいろいろな甲虫に似たものがおり、なかには角のあるものやデコボコの体をしたもの、虹の光沢を持ったものなどがおり、なにがなんだか解らない不思議なグループです。
今後の特別標本展示の予定
「ハエ・アブのなかま」 平成19年9月8日〜10月31日
「日本のカメムシ」 12月1日〜平成20年1月31日
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