当園の職員である原木が昆虫採集をしていたフィールドは主に静岡県中部の大井川水系で、南アルプスを源とする上流部から島田市内の河口周辺までくまなく調査し、子供時代から憧れていたものや県下初記録種など多くの種類を得ることができました。しかし1990年あたりから伐採などにより環境がかわってしまい、現在では昆虫の生息数や植物環境だけでなく、風景さえも当時の面影はありません。今回展示するものはそのような意味からも大変貴重な標本であると同時に、どれも採集時のさまざまな思い出を秘めた品でもあります。なにげなく過ごしていると気が付きませんが、静岡県は標高3000m級の高山や長い海岸線まで備えた環境豊かな県です。昆虫はその地域の環境を指標する生物で種類数が多ければ多いほど豊かな環境といえます。
「小さな甲虫たち」 平成19年2月1日〜3月11日
昆虫の種類数は現在わかっているだけでも70〜90万種といわれていますが、まだ発見されていないものが数多くいるはずで最終的には何種類いるのか見当もつきません。今回展示している「小さな甲虫」のように体長1〜2mmの微小甲虫は研究者も少なく調査も進んでいない分野ですから、せまい静岡県内だけでも少し調査するだけで、図鑑に載っていないものや種として発表されていないものが次々と見つかります。今回は1980年代に採集したものを主体に405種を展示します。
これらの小さな甲虫を皆様に見ていただくという企画は、おそらく全国でも珍しい試みと思われますので、どのような方法が良いか考え、代表的なものの顕微鏡写真を掲示し虫メガネで確認していただく方法にしてみました。小さなものの例えに「ゴマ粒のような・・・」とか言われますので、ためしに黒ゴマも標本箱に入れてあります。1〜2mmの甲虫と比較すると、小さなゴマ粒がとても大きく見えることに驚くでしょう。
また、この小さな甲虫も命を持ち、私達と生活を共にして、同じ地球で生きているということを考え、命の大切さと環境について考えていただくきっかけになれば幸いです。
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